#01.本編

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 春の訪れを感じる三月下旬。お友達である一色(いっしき)ミカちゃんと会えるので、せっかくなのでと、子どもたちを一色くんに任せ(一色修平(しゅうへい)くんはミカちゃんの夫であたしと蒔田さんの後輩でもある)、わたしたちはふたりで花見町へとやってきて、だだ広い公園にて、あったかいドリップコーヒーを堪能している。――風が、やわらかくなった。桜はもう間もなく咲くことだろう。 「そっかぁ。まぁ、蒔田さんが芸能人になったのって昨日や今日のことじゃないですからね。覚悟も出来てるって話ですね」 「でも。顔が綺麗なひとってどこにでもいるもんなんだね?」とあたしはコーヒーカップをすこし傾け、「駅前の有名なドリップコーヒーのお店のご夫婦。ふたりともすんごい美形だったじゃない? 店主のほうなんて、『珈琲いかがでしょう』の実写化かと思ったわ」 「ああ中村倫也が出ていたやつ」ミカちゃんも見ていたらしい。反応はすこぶるいい。「分かりますー。男のマッシュヘアってなんか憧れますよねー。修平は前髪がサラツヤなので。あの系統は羨ましいです」
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