メジロのちーすけ

1/8
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 メジロを知っていますか?   ちいさなちいさな鳥です。子どもの手のひらにすっぽりと入ってしまうくらい。  きみどり色のあたまに、ちょっと黒っぽいみどり色の(はね)をもっています。  なによりも目立つのは、目のまわりがくるりと白くなっていること。目のまわりが白いから、メジロと名前がつくくらいですもの。  チーチー、チュリルチュリル。  メジロのちーすけは、お母さんからごはんをもらって、元気に鳴きました。  生まれたばかりのときは、もも色でやせっぽちな体でした。でもいまは、すっかり綿毛(わたげ)につつまれて、こんもり丸くなっています。  色だって、お父さんとお母さんにそっくり。  すこし前まで、ちーすけは三羽(さんわ)のきょうだいと、いっしょにくらしていました。  でもいまは、巣の中にはちーすけしかいません。きょうだいは、自分の力で空へと()んでいったのです。  ひな鳥は、おとなの鳥になるために、()からでていきます。これを巣立(すだ)ちといいます。  ちーすけもなんとか飛ぼうとするのですが、どうにもうまくいきません。きょうも巣のふちに足をかけて、ぱたぱた(はね)をうごかします。  ここでふんわり体がうけば、きっとちーすけも巣立ちができたでしょう。  だのにどんなにいっしょうけんめいはばたいても、足は巣からはなれません。  それもそのはず。空を飛ぶためには勇気をだして、「えいやっ」と足をのばすことが大切なのです。  ほんとうに飛べるのかな。落ちたらどうしよう。  そんなことを考えると、足から力がぬけて、巣の中にころげてしまうのでした。  ひっくりかえったちーすけは、空を見上げます。葉っぱと枝のすきまから、白い雲がのんびりとながれていくのが見えました。 「ぼくも雲みたいに、空にうかびたいな」  ちーすけはちいさな声でいいました。  とてもこわがりのちーすけを、お父さんもお母さんもしからないで、そっと見まもっています。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!