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夜が明けて、お父さんとお母さんはごはんをさがしに、巣からでていきました。
ちーすけがさみしくなったころ、巣の上をよこぎる木の枝に、赤とんぼがとまりました。ともだちのアカネです。
「ちーすけ、おはよう」
「おはよう。きょうもいい天気だね」
朝の光が、アカネの羽をキラキラと光らせます。うすいガラスざいくのような羽はとてもきれいです。
「ぼくね、きのうも飛ぼうと思って、ぱたぱたやったんだ」
「どうだったの?」
「うまくいかなかったよ」
ちーすけは、しょんぼりとあたまをさげました。
「えらいわね、ちーすけ」
ちーすけはふしぎに思いました。飛べないのに、ほめられるだなんて。
「どうしてえらいの?」
「だって、ちゃんと毎日れんしゅうしているのよ」
しょげていたのがうそみたいに、ちーすけは力がわきました。はりきって、巣のふちに立ちます。
木の枝のすきまから、青い空と稲が葉をすらせる田んぼが見えました。
「巣の外は広いよね。空を飛べたら、気持ちいいだろうな」
「そうそう。こわいことは考えないで、風にのればいいのよ」
「風がないときは?」
「自分でぱたぱたかしら」
「やっぱりそうかー」
ちーすけが笑うと、アカネも笑うのでした。
「じゃあ、またくるわね」
アカネが枝から足をはなして、すっとちゅうにうきました。目に見えないほどすばやく羽をふるわせて、すいすい前に進みます。
すきとおったつばさにお日さまをあびて、ちらちらと光りながら、アカネは田んぼのかなたへと消えていきました。
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