初めてのカンニング

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 大学入試──点数という無機質な数字で無垢な学生達を合格者と不合格者とにふるい分ける無慈悲な制度の名。  その試練を突破し、見事に合格することが出来れば人生は約束されたも同然。だが、落ちた者は格下の大学に入ってそこそこの人生だ。負け組だ。それだけはなりたくない。  俺の模試の成績はオールE判定……まさに負け組へまっしぐらといった状況だ。ピンチだ。絶望だ。だが俺には起死回生を呼び寄せる秘策がある。  それは、カンニングだッ!  カンペを持ち込むのかって? まさか。山を張れる頭脳があればカンニングなんて要らない。試験会場からスマホで解答を教えてもらうのかって? 無理無理、解答をもらえたとしても試験官にバレれば社会的に死んでお陀仏。俺はそんな俗っぽい方法はやらない。もっと確実なやり方で、誰にもバレることなく解答を得る。  フッ、どうやるか気になるか? ならば聞いて驚け。俺がカンニングの方法として選んだのは、俺の体の中に現役東大生の魂を召喚すること! すなわち、霊媒だッ!!  手首に仕込んだ数珠をじゃらりと鳴らす。試験官の目が俺の方を向いたがすぐに手元の時計に戻った。この法具こそ霊媒の要。感謝するぜ、ご先祖様! 俺に偉大な霊媒師の血が流れていたお陰で、黄泉の国から魂を呼ぶことが出来たんだ!  思えばここまで長かったなぁ。受験本番が近づく中、ご先祖様の巻物を必死に解読して、修行して、そしてようやくコイツを呼び出せたんだ。頭の中にヤツの声が響いた時は感動したなぁ。 『そんなに感動アルカ? ワタシ直接心に語りかけられるのは気持ち悪い思うネ』  ……何故か口調が銀魂の神楽ちゃんなのはおいておいてな。しかも男。 『神楽ちゃんを悪く言うのは許さないネ! 神楽ちゃんとっても可愛い女の子アル! ワタシ神楽ちゃんに人生変えられたネ。アニメ観て必死にニッポン語勉強したアル。わかったカ!?』  うん……あのアニメは俺も観てた。観てたが……なんでよりによって一番日本人らしくないヤツの言葉覚えてきたんだよ!? 普通に銀さんとかでよかったじゃんか!   『銀さんの言葉真似てもつまらないネ! ワタシインド人、外人なら神楽ちゃんのニッポン語使ってても許されるヨ! そんなこともわからないアルカ!?』  いや、どんな理論だよ……。 『へへん、参ったカ? ワタシ、腐ってもトーダイセーアル。これくらい朝飯前アル』  そこは東大生関係なくねぇか?  まぁでも、コイツの言う通り、腐っても東大生なんだ。こんな胡散臭いエセ中国人インド留学生でも。
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