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今日、卒業する。キミから。
キミは優しい人だ。頼めばなんでもイヤな顔せずにやってくれる。眩しい笑顔を持ち合わせている、クラスのアイドル的存在のキミ。
だからこそ、キミはボクとつり合っていない。ボクといれば評判もボク並みになり、嗜好で笑われる。そんなキミはキミじゃない。だから今日、別れる。
そんな思いを胸にあの桜の木の下に着いた。
ボクらが付き合うと決めたあの場所にーーー
桜が青々と繁っていた夏休み、キミは幹のところにもたれて空を見ていた。ボクはそんなキミに興味をもち、話しかけに行った。その時のボクはテストの点数が良く、無敵状態だったんだ。
聞くと、テストのことで母と喧嘩したらしい。ボクには軌跡が起きても取れない点数のところでだったが。でも無敵のボクはキミを笑わせにいった。高嶺の花が身近に感じたからかもしれない。次元が違い過ぎてブッ飛んだのかもしれない。
でも、それをキッカケに、キミとは仲良くなれたんだーーー
やはりキミは幹のところにもたれて座っていた。
こちらに気づいて微笑んだ。
「話って何?」
と、キミが聞いた。その無垢で眩しい笑顔がボクの心に深く刺さると同時に、決意を固くした。
そして、ついに言った。
「ねぇ、ボクとキミはつり合っていないんじゃないかな。キミに対してボクは劣りすぎている、そんな気がする」
「いきなり何言ってるの」
「キミは優しいしかわいい。それに対してハッキリ言ってボクは何も持ってないじゃないか。ボクにキミは持て余してしまっている気がするんだ」
キミは哀しそうな、いや、寂しそうにも見える、ツラい顔をしてボクの話を聞いていた。そんなふうに見えるのは、ボクが哀しく寂しくツラいからか。
だがその表情が変わった。変わったのは見えたがキミはすぐに後ろを向き、どんな顔をしているのかは分からなかった。
「そう…なの…
私はケッコー仲良く楽しくやっいけてたんじゃないって思ってたけど。私だけだったってことだね。なんか淋しいよ。」
「違うんだ。ボクはキミのことが好きなんだよ。でもボクとキミは世界の格が違う。これはキミを思っていってるんだ」
「そう…」
キミはこっちに振り返った。屈託なく笑っている。
「まず、君はそんなに自分のことを卑下しないでほしいな。人には人の、君には君の良さがあるんだから。私は笑い合っているのが好きだよ。
もし君の格が低いって言うのなら、私は君のところまで格っていうものを落とすよ。だから、これからも今までどおり、おもしろい、奥深い、一緒に居てて楽しいキミでいてね」
目頭が熱くなっていく。ボクはキミからじゃなく、今までの僕から卒業する。キミに見合ったすばらしい人間を目指す。キミとの生活は、まだ留年らしい。
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