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翌日の朝、宮下と松田は東京郊外の高級住宅街にある古枝教授の自宅で、教授から直接説明を受けていた。
リビングのコーヒーテーブルをはさんでソファに腰かけた宮下と松田に、ロマンスグレーの髪で長身の、いかにも学者らしい風貌の教授は護衛の必要性の理由を語った。
「マリアQは将来の、介護、育児などの分野での支援ロボットとして開発されたアンドロイドなんだ。遠目には人間そっくりなので、強奪して悪用しようという輩が現れないとも限らない」
宮下がうなずきながら言う。
「たとえば爆弾テロの運び手として使う、といった事ですか?」
古枝教授がうなずいて言葉を続ける。
「さらに、可能性としてだが、ある勢力にとってはマリアQのようなアンドロイドは天敵になり得る」
松田が眉をひそめて聞き返す。
「ある勢力? 何でしょう、それは?」
「君たちが先日遭遇した強化改造人間だよ」
宮下も松田もアッと声を上げた。教授が続けて言う。
「マリアQは高出力の全個体電池を動力源とする人型ロボットだ。短時間なら人間をはるかにしのぐパワーを出せるように設計されている。たとえば火災現場でなら、成人男性一人を抱えて軽々と運ぶ事も出来る。人間の運動能力に当たる部分も同じだ。つまり、あの改造人間と戦闘で渡り合う事も理論的には可能という事になる」
松田が掌でパンと膝を打って言う。
「実験中にそういった連中がアンドロイドを強奪しに来る可能性がある、それで自分たちにそれを防いで欲しい。そういう事でありますか?」
古枝教授は笑顔になってしきりにうなずく。
「その通りだ。いや、さすがに渡先生の紹介だ、理解が早くて助かる。ただ、息子にこんなややこしい話はしたくないのでね。史郎には、君たちは単なる付き添いだという事にしてある。そこはうまく口裏を合わせてくれるかね?」
宮下が応える。
「承知しました。それで実証実験の期間は?」
「今日から2週間の予定だ。君たちの部屋は2階に用意してある。では、息子と、そしてマリアQと対面してもらおうか」
古枝教授は固定電話の受話器を取り、内線でリビングへ来るよう伝えた。
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