第一章「当然として神を憎みます。」

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第一章「当然として神を憎みます。」

 暗闇の底に光を放つ。どうせ、誰も気付かない明明な熾りを…  ここで前もって言っておく、この後、書き綴る事は、もしかしたら、私の妬み、僻み、怒りが主観的となり、客観的な視線からはほど遠い感性かもしれないことを。  私は何も悪くない。ただ、不器用で脇の甘い、言わば鈍臭い人間であるだけである。  時代に、流れに逆らわず、その時、その時のトラブルに実直に立ち向かって行っただけである。  よく言えば、素直だったかもしれない。  幼少、物心付いた時から、今思えば、そうであった。  いつもいつも、同じ苦しみが壁となる。  学校生活、家庭生活、恋愛、仕事…  55年間、生きてきた。何も変わらない。幼稚園の時と変わらない。  何故か認められない。  何かをやる時、誰かに認めて貰おうなんか野心はなく、ただ単に、持って生まれた本能による自己防衛的な思考、行動により事を決定して来た。  私の性格は、恥ずかしがり屋、人見知り、よって、精神の持久力が乏しい。人と普通に接する事により、通常よりも何十倍のエネルギーを浪費してしまう。  心の供水タンクが直ぐに枯れてしまう。  そして疲れる。  兄弟は3人。その真ん中だ。末っ子のように親に甘える事が出来ない。長子のように期待もされない。それが人生初めての矛盾であった。  難しいスタンスに運命により立たされた。仕方がないが…  親に甘えたい!  可愛がれたい!  これが初めての欲求であった事を幼稚園の時に自覚した。  素直に親に甘える事ができない人間が、友達に自分を曝け出すことなど出来るはずがない。  ここから、個体的には孤独が始まり、心の中に併存するもう1人の違う自分が存在し始めた。  その自分をBと名付けよう。  Bは羨ましいほど、架空の中で私の欲求を満たす行動を取る。  Bは母親の膝枕で寝そべることもできた。  Bは父親からも抱っこをして貰っていた。  Bは学校でもか弱く、男の子でありながら、中性的で、いじめられて、皆んなに同情される事ができた。  羨ましい… 実際の私は、幼少期、身体が大きく、「ジャイアン」、「ゴリラ芋」と言われ、小学校低学年から、嫌々ながら、美少年の役は剥奪され、怖役を余儀なくされてしまった。  心は甘えん坊なのに、見かけで役落ちさせられてしまった。  家族の中でも、3歳下の弟は可愛がられた。実際、私の幼少期の姿よりも愛らしかった。    どうして、弟が親の布団の中で寝る事ができるのか、どうして、親に「抱っこして!」と甘える事ができるのか、どうして、みんなに「可愛い」と言われるのか、私には見当も付かず、羨ましい限りであった。  軟弱になりたかった。イジメられたかった。助けられたかった、心配して貰いたかった。  この時から、現在に至までの、私のキャラクターが整えられてしまった。  体格の良い、親分肌で、人に甘えることのできない男。  決して泣くことも出来ず、いつも戦って勝つ事を信条とし、恋愛も友情も器用に立ち回ることは不用とされ、来るものは拒まず、去るものをは追わず、不器用な人生が始まってしまった。  人に甘えたかった。  何故  こうなったか…  わからないから、憤慨する。  誰に憤慨すべきか!  それは神だろう。  当たり前だ。
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