色のある手紙を

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 伶が難関大学を受験すると決めてからはあっという間に色んなことが順序よく進んでいった。小さな頃から写真が大好きだった伶はよく首からカメラをぶら下げて走り回っていた。好きなものを好きなだけ撮るのが楽しいと、そう言って。  そんな伶は、写真家としてもっと人と関わってその中で自分らしさを見つけたい、そうやって明るく笑いながら話してくれた。ひとりでは学びきれなかった、写真を撮ることの楽しさをより良い環境で学びたいのだ、と。「これからも椿のそばにいるし、私を纏う環境がただ変わるだけだよ」とも言ってくれた。  わたしはそれを聞いて頷き、納得した上でそっと伶の背中を押した。  伶の大学進学に寂しさを覚えないわけではない。いつだってずっと一緒だった。一つ歳が違うのだから同じ歩幅で歩みを進めたとしてもいつかどこかで必ず階は変わってしまうのだ。中学生に上がる時だってそうだった。一年先に卒業する伶の背中がやけに大きく見えて悲しかった。
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