色のある手紙を

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 冷たい風の舞う季節。外では踊らされた木の葉が軽く乾いた音を立てて冬を鳴らしている。寒いと嘆けば、いつもは心配性なあの子がすぐに飛んでやってくるのに。いれたばかりの熱いココアを冷ましながら、伶のことを考える。怜も今ごろは、温かい飲み物でも飲んで頑張ってるだろうか。あ、でもそんなことすら考えずにひたすら没頭したりしてそうだなぁ。 「……大丈夫かな」  自分にだって課題や家の事などやる事なんていくらだってあるのに何ひとつ身が入らないでいる。距離にしたら数メートル、ほんの少し隔てた先、お隣さん。そこに怜は居るはずなのに音も温度も、わたしを呼ぶ声だって聞こえてこないのはなんだか不思議だった。これを寂しさと呼ぶならばわたしはとうに寂しさで潰れてしまいそうになっている。
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