初めての海外生活、両親のこと

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初めての海外生活、両親のこと

 僕にとっても家族にとっても、初めての海外生活。慣れない異文化。とにかくすべてが初めて尽くしだった。正直なところ、現地の高校に通っていた最初の頃の記憶はほとんどない。それぐらい英語がわからなかったのだ。日本の中学では英語の成績は悪くない方だったし、特別シャイという訳でもなかったのだが、とにかく皆早口で何を言っているのかさっぱりだった。だからすっかりおねしょのことは頭になかった(まだ、時々してしまっていたのだけれど) それぐらい授業に付いて行くのに必死だったんだ。  少し話が逸れるが、何故僕が日本の高校に行かずアメリカの、しかも現地の高校に入学することになったのか。それは僕の父、和彦と母、聡子が揃って、編集者の仕事をしているからだった。 幼い頃から英語に触れ、両親とも英語が話せた(本人達によるとバイリンガルらしい)。雑誌の日本語版を出そうということになり3年という期限付きで日本から赴任したのだ。父も母も昔からアメリカに憧れていたようで、父は古いバンドのレコードを集めていたし、母は母で、大学の英語サークルの部長を務めたほどだった。お互い就職した出版社で出会ってから、ずっと海外赴任の希望を出していた。2人にとってはいわば「念願かなって」のアメリカだったようだ。だからある意味このアメリカ行きはごく自然なことだったのかもしれない。
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