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再会
そのイシュー。港町ラフィンウエルをディアス達が着く前に発ち、そこから遥か北東の山地を目指していた。
父からの書簡に依れば深い山中の広い谷間に国を興すとあった。
その地は周囲を岩山に挟まれ、東の断崖から清浄な水が蕩々と落ち、西に向け開かれた月の谷より遥かに広い谷・・と言うより盆地。
滝の水は泉を成し、そこから流れる清水を引き、それを中心とした王宮を造っているという。
人族とは一線を画し、エルフ族が創る平和に暮らせる国、新しいルミアス王国がそこにあると。
旅の日数約二ヶ月、もう少しでその地に着くはず。兵士達は家族との再会を楽しみに、思わず足が急ぐ。
前方に賊あり。・・・のんびりとした気持ちを引き裂く、先遣隊からの使者の声が響く。
「人数は。」
「二、三十人。武装しています。」
イシューは案内人(ガイド)を呼びここいらに住む者のことを尋ねる。
「アッティラ族の野盗でしょう。野蛮な部族です。」
「迂回する。」
イシューが全軍に指令を出す。
「叩き潰せば・・・」
誰かが言う。
「もう血は見飽きた。」
イシューが苦い顔をする。
「あとの旅人の災いになるぞ。」
馬を飛ばし追いついてきていたダイクの声がそれを咎める。
「お前はあまり人との戦闘に参加してないからな。
もう殺戮はたくさんだ。」
エルフの軍は大きく迂回した。それをどう勘違いしたのか野盗の一団が追いすがってくる。
「放っておけ、こちらから手を出す必要は無い。」
「後ろ、追いつかれます。」
そう言う端から後方が乱れだした。
「足が速いな。
後方、陣を敷け。中間部は散開、ダイク指揮を頼む。前方の我等は迂回して敵を包む。
なるべく殺傷はするな。」
戦い慣れた軍はあっと言う間に賊を槍衾(やりぶすま)で囲んだ。
その中で三十人近い賊が手を合わせる。
「命だけは助ける、追ってくるなよ。」
イシューは賊の武器のうち短剣を除き全てを取り上げた。
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