建国

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建国

「バルバロッサの後ろが何か騒がしいな。」  奥の砦の城壁の上に立ったヴィフィールが目を凝らす。確かに蛮族の後方に乱れが見える。 「王宮からの応援・・・まさか・・・な。」  ヴィフィールは淡い期待を振り捨て、転がる様に城壁を降りる。  「斥候隊の準備。」  七、八人ほどの屈強な者達が集まる。  「山を大回りして、バルバロッサの後ろで何が起きているか確認しろ。連絡は鳩で。  無理してこの砦に戻る必要はない。」  ヴィフィールは手早く怒鳴り、また城壁に登った。  「戦闘の準備。」  とまた下に向け怒鳴った。  砦では二百人ほどに減った兵士達が、千人以上の逃げ遅れた住民を守っていた。  バルバロッサの数はあるときは増え、あるときは減った。王宮を襲われたときには雲霞(うんか)の様な数であったが、そこを荒らすだけ荒らすと上の砦、奥の砦と進む間にその数は減っていっていた。  バルバロッサ、今は千四・五百には減っているが一時期は奥の砦の前に二千人を超していた。それらから砦を守るため、千人以上居た兵士が今は五分の一以下に減っていた。  ヴィフィール自身は討ち死を覚悟していたが、一緒に居る住民の処遇に窮していた。  後ろは深い山、そしてそれを越えた断崖の下は海・・逃げ場はない。全員が納得して死にゆくのか、それとも婦女子をバルバロッサの暴虐の嵐の前に投げ出させても生を掴ませるのか、それが彼の深い悩みと成っていた。  戦えるだけ・・・ヴィフィールはいつもと同じ答えの中、城門の防御に専念した。  それにしてもバルバロッサの後方が騒がしい、彼らの増援にしては・・・もしかして・・だがここは忘れられた戦場。ヴィフィールは首を振ってすぐにそれを打ち消した。
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