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旧ルミアスの王宮。上の砦に攻め入るときには山中を迂回した。
どれだけの期間戦い続けたのか、懐かしの姿を間近に見る。
「斥候隊。」
ティルトは十人ほどの者を呼んだ。
「宮城の様子がおかしい・・バルバロッサが居るにしては静かすぎる。何が起きているのか調べる。一緒に来てくれ。」
自身を指揮者として王宮に潜入する。そこで見たのはフィルリアの旗。
(奥の砦の秘密が知れたか。)
ティルトが唇を噛む。が、意を決し、
「私はルミアスのティルト。ここの指揮官に会いたい。」
と、大声を上げた。
「ティルト殿・・ディアス殿と共に戦ったという、ルミアスの勇者か。」
嗄(しわが)れてはいるがよく通る声がそれに応える。 「私はフィルリアの将、ギルサス。
ハーディの連絡を受けこの地の援軍に参った。」
ハーディの・・・ティルトが首を傾げる。
「先ずは中へ。」
ギルサスと名乗った男がティルトを呼ぶ。
「二人帰れ。
帰って俺の命があるまで動くなと伝えよ。」
ティルトは小声で部下に命じた。
大広間、かつてはここに王が居、マーランがその横に立ち、イシュー達と議論を交わした場所。懐かしげにその部屋を見回す。
「お久しぶりでしょう。」
隅に置かれた椅子の前でギルサスが声を掛け、それにティルトが頷く。
「あなた方が旧ルミアスに蔓延(はびこ)るバルバロッサを討つためにこの地に入ったと、ハーディから連絡があった。
あなた方の戦力は約千、それでは心許ない。旧ルミアスの場所は解らないがバルバロッサの動きを追い、貴方を助けてくれとの伝言だった。」
言いながら、ギルサスは封がされた書状をティルトに手渡した。
その書状に目を通し、
「ここまで考えていたか、ハーディは・・・」
と、ティルトは唸った。
書状の中身とは・・・
建国するのであればその大義、人員配置、国の経営、軍の掌握など多岐にわたり、また、ハーディの下からの兵の供出、フィルリアとの友好関係の構築、それによる国を維持するに耐える国民の集め方まで・・・
戦友か・・・
ふとティルトは遠くを見た。
「ここに至るまでに粗方のバルバロッサは退治した。が、まだ兵は必要なはず。ここに選りすぐりの者千人を残していきます。」
「残して・・・」
「我々は退き上げ、後は貴方達に任せます。頃合いを見て、ファルスにおいでください。我が女王、ミランダと共にお待ち申し上げます。」
そこまで言うとギルサスは退陣の準備を命じた。
奥の砦の守備は股肱の部下ラゴラスに任せてヴィフィールが王宮に着いたのはそれから三日後だった。
主立った者十数人が王宮の大広間に集まり、今後の国のあり方を話し合った。
奥の砦はエルフ族だけで経営し、上の砦は選ばれた人とエルフ。王宮には人とエルフで共存し、外からの移民はここまで受け入れる。中の砦は当面放棄し、外敵を防ぐ下の砦を強化する。
「ハーディにここの地図を送ろうと思う。彼の意見も聞いてみたい。」
ティルトが会議が終わるとそこに居る者達に提案し、それは受け入れられた。その使者はティルト。彼が直接ハーディに伝えることとなった。
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