サンキュー、ジェイミー

　ギターは、人間と同じで個性を持っている。材料になる木の種類や組み合わせが、大きく音を変える。
　それがエレキギターになると、そこへ文字通り電気の部品が絡んでくる。
　音量や音色を調整するつまみや、弦を弾いた音をマイクのように拾い上げるパーツが付いている。ピックアップと呼ばれるそのパーツは、普通は一本のギターに、二、三個付いている。
　となれば、それを切り替えるスイッチもついている。
　さらに、同じ木の組み合わせで、同じパーツを用いたとしても、作り手の技術力が音を変える。
　そして、そんなギターの製造メーカーや作っている工場は、世界中に数えきれないくらいある──らしい。

　それが示すことは、全てのギターはオンリーワンであるという事実だ。
　人間に例えるなら、それぞれが自分にしかない声でメロディーを奏でることができる。
　俺はその声を聴きに、楽器屋へと自転車を走らせた。　
　少しふらつくのは、夏の暑さや詰め込み過ぎた知識だけが原因ではない。
　昨夜は眠れなかった。
　高校二年の夏休み、過疎化が進むこの町に、ついに待望の楽器屋がオープンしたのだ。