記憶洗い

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 白熱電灯の温かみの光が整理された室内を照らす。  十五畳ぐらいはあるだろうか。  部屋の真ん中に木製の丸テーブルと椅子。  老人はがっしりとした椅子を部屋の隅から運んできて向かいにおき、座るように声をかけてくれる。  部屋にはテレビ、エアコン、パソコンがない。  小さな冷蔵庫だけがキッチンの隅にある。  窓側にベッドが置いてあるほか、極端に物が少ない。 「それで?」  向かい合った老人はテーブルの上で指を組み合わせ、それをみながらたずねる。 「道に迷いました」 「どこへ行こうとしてたんや」 「いや、行くあてはありません」 「そうか、そうなんか」  老人は聞き取れないぐらいの小さな声でつぶやく。
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