記憶洗い

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 ふと顔を上げ、小さな目で私の心の奥底をのぞきこむようにして、切り出した。 「記憶ちゅうもんは、人間を支配しているんや。そやから、記憶は汚れたままではあかんのや。どうするかわかるか?」  飛躍した話の内容についていけず、 「さあ」  としか返せなかった。 「洗うんや」 「洗う? どういうことですか?」 「記憶洗いや。どうやると思う?」   私は首をひねり、苦し紛れに 「脳みそを取り出して洗うのでしょうか」  と絞り出す。 「そや。勘がええやないか」   背筋に悪寒が走る。
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