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「どや、あんた、洗ってやろうか。死のうと思うてたんやろう」
老人は私の心を読めるのか。
「ワシも、もう年を取り過ぎてしもうて、この仕事を続けるのもきついと思うてたんや。あんたの記憶をきれいさっぱり洗い流してやる。これがワシの最後の仕事や。嫌な思い出を流し去って、新しい人生を歩むんや。ええやろう」
老人が口をゆがめて笑う。
「一晩、考えさせてください」
「ええで。洗うとなったら、玉を取り出してもらわなあかん。じっくりと考えたらええわ」
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