記憶洗い

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 二時間ほどたっただろうか。  老人が玄関のドアを開け入ってきた後、背が高くほっそりとした若い女が続いてくる。  髪の毛が長い、ギョロッとした大きな目が印象的で、真っ赤なワンピースを着ている。  椅子に座っている私の前に、女は仁王立ちして 「本当に、よござんすね」  と時代がかった低い声でたずねる。  私が大きくうなずくと、女は両手で私の後頭部を抱きかかえるようにして顔を女の胸に押しつける。  花のむせ返るような甘い香りがして、女の片手が頭頂部からゆっくりと差し込まれていく。  痛みがなく、意識がぼんやりとしていく。  新しい世界に踏み込んだ瞬間だった。 了
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