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あの日から、早いもので一年が経過した。
「海、起きないと仕事でしょう?」
理が呆れた顔をして布団を剥がす。
俺は剥がされた布団を奪い返し
「誰のせいで起きられないと思っいるんだよ!」
睨み付けて布団を被ると、理が首を傾げて
「え?だって、それは海が『もっともっと』って……」
と言い掛けた言葉を「わ〜!わ〜!」と叫んで声を遮った。
真っ赤な顔をした俺に、理は布団ごと抱き締めると
「ほら、今日は早いんでしょう」
そう言いながら、布団から少しだけ出ている頬にキスを落とす。
俺が理の顔を見上げ
「頬だけ?」
と呟くと、理は溶けた生クリームみたいな甘ったるい笑みを浮かべて唇にキスをした。
「ん…………んぅ…………」
舌を絡め合い、もっと……とねだるように理の首に腕を回すと
「海……ご飯、冷めちゃうよ」
そう囁きながら、俺を布団に押し倒した。
「朝食と僕、どっちが欲しい?」
甘く囁かれて、身体が甘い刺激を求めてブルリと震える。
「理……」
唇が触れるスレスレの距離で囁く俺に、理は満足そうに微笑むと
「リクエストにお答えしたいのは山々だけど、これ以上ヤッたらマジで足腰立たなくなるけど良いの?今日、休めないんでしょう?」
そう囁かれて我に返った。
「そうだった!」
俺に覆い被さる理を突き飛ばし、慌てて支度を始めると
「優しく起こしたのに、僕の扱い酷くない?」
と頬を膨らませている。
「理、悪かった。起こしてくれて、ありがとう」
頬にキスをして、食卓に並ぶ朝食に視線を向けた。
あれから理も料理を覚えようとして、毎朝練習と称して朝食を用意してくれるようになった。
今では毎朝、目玉焼きとベーコン焼いて、トーストを用意してくれるのだ。
「今日も美味そうだな」
「本当に?」
むくれていた理が、俺の言葉に慌てて走り寄る。
「毎朝、ありがとうな」
頬にキスをすると、今度は理が目を閉じて待っている。
そっと唇にキスをすると、ギュッと俺に抱き着いて
「もっともっと、料理を覚えるからね」
そう言って微笑んだ。
「楽しみにしてるよ」
「うん!」
理の笑顔に、俺も笑顔を返して食卓に着いた。
もちろん、ちゃすけの朝食も用意されている。
今日もちゃすけと理、そして俺の2人と1匹で食卓を囲み手を合わせる。
「いただきます!」
眩しい朝日の中、他愛のない会話をしながら食事を取る。こんな毎日が、俺に訪れるなんて夢のようだ。
俺は今、やっと幸せってやつを噛み締めているのかもしれない。【完】
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