45人が本棚に入れています
本棚に追加
「けい……た……?」
思わず呟いた瞬間
「海? 大丈夫か?」
と、ノラの声に我に返る。
右手の甲を額に当ててると、深く息を吐き出した。
「夢……か……」
そう呟いた俺の右手首を掴むと
「大丈夫か? 凄くうなされていたよ」
と、ノラが心配そうに俺を見下ろす。
言われてみたら、確かに全身汗でびっしょりと濡れている。
「凄い汗だな」
そっと額に触れたノラの手の熱さにドキリとしてしまい、誤魔化すように起き上がり
「シャワーを浴びて来る」
と言い残して浴室へと歩き出すと、ノラが
「海!」
と呼び止めた。
ノラが珍しく声を荒らげたのに驚いて振り向くと、ノラはキュッと唇を引き結んでから俯いてしまう。
(どうしたんだろう?)と首を傾げると、ノラは悲しそうな笑顔を一瞬浮かべてから
「ごめん、なんでもない。ほら、汗が冷える前にシャワーを浴びて来なよ」
そう言うと、布団に横になってしまう。
「ノラ、起してごめんな」
浴室のドアノブに手を当てながら言うと、ノラは手だけをヒラヒラと振って
「先に寝るね、おやすみ」
と答えて布団を被ってしまった。
こんな時、どうしたら良いのか分からなくて戸惑ってしまう。
俺は、後ろ髪引かれる思いで浴室へと足を踏み入れた。
最初のコメントを投稿しよう!