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黒いねこ
天使の涙のような雨が降っています。
その涙よりも上、ずっと上の空に、大きな橋がかかっています。
赤いスカーフを巻いた真っ黒なねこがしっぽをピンと持ち上げて、その橋をさっそうと歩いていました。
すると橋の向こうから白いたまごが歩いてきました。
白いたまごはねこを見ると
「きゃあ! こわいよう」
と、そこにうずくまってしまいました。
「だいじょうぶだよ こわくないよ」
ねこは言いましたが、たまごはうずくまったまま動きません。
ねこは少し考えると、そうだ、とうなずき後ろを向きました。
「こわがりなあなたの中に、『強さ』をプレゼントしましょう」
真っ黒なねこはそう言うと、しっぽをぐるんと大きく回しました。
すると、しっぽからキラキラした光が出て、白いたまごをつつみました。
光が消えると白いたまごは赤い色になり、心が強くなりました。
真っ黒なねこは、とても暗いグレイのねこになりました。
赤いたまごと、赤いスカーフを巻いたとても暗いグレイのねこがしっぽをピンと持ち上げて、その橋をかろやかに歩いていました。
すると橋の向こうから白いたまごが歩いてきました。
白いたまごはねこを見ると、つまらなさそうにそっぽをむきました。
「どうしたの?」
ねこがたずねると
「なんだかつまらないの」
白いたまごはそう言って、またそっぽをむいてしまいました。
ねこは少し考えると、そうだ、とうなずき後ろを向きました。
「たいくつなあなたの中に、『楽しさ』をプレゼントしましょう」
とても暗いグレイのねこはそう言うと、しっぽをぐるんと大きく回しました。
すると、しっぽからキラキラした光が出て、白いたまごをつつみました。
光が消えると白いたまごはオレンジ色になり、心が楽しくなりました。
とても暗いグレイのねこは、暗いグレイのねこになりました。
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