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「こんにちは。ごめんね、今日は社長は出張でね、代わりに僕がやっているんだ。僕は桜野グループの御曹司、桜野 尊だよ。よろしくね、新入社員さん。」
優しい声で言われると、想良の緊張は少し解けた。想良は社長に落ち着いて一礼する。
「そこに座って。話しを聞きたいんだ。」
「…はい、失礼します」
そして、ふかふかのソファーに腰掛けて社長(兼 御曹司)を見る。社長はにこっと笑って想良を見た。
「いきなりすまない。ただ、君が両親を無くされていると聞いていてもたってもいれなくなってね。…実はね、僕は養子なんだよ。だけど、勉強も出来たからね、ちゃんと跡継ぎにもなれた。僕は恵まれていると思うよ。」
想良はいきなり反応に困っていた。これはどういう反応が正解なのだろうと一生懸命考えていたのだ。
そんな想良を見て、尊は優しい笑顔で微笑んだ。
「君を呼んだのはね、君に僕の家に来て欲しいからなんだ。僕は一人暮らしでね…ちゃんと父にも承諾を得ているよ。お金もないそうだし…どうかな?」
「………、はい!喜んでいきます!」
少し考えてから想良は言った。さらさらお金なんて興味は無い。ただ…想良がこれがベストだろうと考えた結果だった。
水道代も払えなくなりそうなところで、救われた。しかも、御曹司に頼まれて。これ以上良い条件は無かった。
尊はまた優しく微笑んで言った。
「じゃあ、帰りに社長室に寄ってくれないかい?家を教えるから。あと、この事を誰にも言ってはいけないよ。分かった?」
「はい!」
これで家計の心配はなくなった。そして、今までよりももっと軽かな気持ちで想良は新しい職場へと向かった。
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「うん、これで設定は完了だよ砂城君。君には事務の仕事を任せるよ。時々アイデアをだしてもらったりするから、その時はよろしく。そして、君の教育係は、源君だから。」
「はい、よろしくおねがいします!」
上司はすぐさま去っていく。昇進すると、忙しくなるのだろうか。教育係と言われた【源君】は、色々上司に聞いた後こちらへやってきた。
「こんにちは。源です。今は8年目になるかな、よろしくね。」
「よろしくおねがいしますっ…」
堅苦しい人だな、というのが第一印象だろうか。けれど、想良に誠意があるのは一応認めたようで、にこっと笑った。想良も愛想笑いを返す。
「…じゃあ、まず使っていく基本的な操作を紹介していくよ。SHIFT押して、そう、で―――」
見た目よりは、優しく教えてくれる。いわゆるこれがコワモテという奴じゃなかろうかと想良は思った。
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