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仕事がやっと終わる。想良は、誰にも見つからないように社長室の方へ向かった。
「…想良さん遅かったですよ、テンパってたんですか?社長がお待ちになられていますよ?」
「すいません!本当にテンパっていまして!」
想良がばっと頭を下げる。秘書ははぁっとため息をついて「そういうのは社長に言ってください」と想良を社長室に押し込んだ。
「それでは、私はもう勤務時間は終わっていますので」
秘書がそういうのはおんなじだなと想良は苦笑する。
中に入ると、社長(兼 御曹司)が椅子に座って待っていた。
「…良かった。来ないかと思って心配したんだよ。さぁ、君の家はもう解約したし、ダンボールも運び込まれているし、もうなんなら開けてちゃんとセットしてあると思うよ。」
想良はお金の力に感動するばかりだった。なぜそんなに早いのかと言えば、=金しかないからだ。
「さぁ、行こうか。…やはり僕は君に一目惚れしたよ、砂城君。」
顔を真っ赤にさせる想良を、尊は素直に「可愛い」と言った。
社長専用の車に乗り込むと、運転手は「御曹司様のお宅ですか?」と言った。尊がうなずくと、運転手は車を走らせた。
「夜景が綺麗だろう?道を覚えるんだよ、分かるかい?」
「あの…社長…ち、近いです…っ」
「駄目かい?」
甘い声でそう言われて、駄目と言おうとしていた気持ちは一瞬で消え失せてしまった。吐息が聞こえる位置まで来る。しかしそれを自然に受け入れている自分がいた。
「着きましたよ」
運転手にそう言われて、我に返る。想良はそそくさを車を出た。これが御曹司の住む家か…と家を見上げる。普通に一軒家という感じの家だった。尊は普通に家に入って想良を招き入れる。
「どうかな?庶民のぬくもりもあっていいと思うんだが。じゃあ、今日はつかれたことだし、風呂でも入って寝るか。」
「はい…あの、僕は朝に入る派なんですけど…」
おそるおそる想良は尊に言ってみた。尊は、おどおどしている想良に首をかしげると、何でもないように言った。
「じゃあ僕と入るかい?」
逆に凄いなそれって。と想良は思い切りツッコミたくなったが、相手は将来社長になろう男だ。
つまり。
――将来的にも言わないほうが良い。
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