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同居している彼女に打ち明けたら、黙って聞いていてくれた。何となく応援してくれていることが分かるから不思議だ。とても居心地がいい。
あたしは彼女の好意に甘えて、二人でランチを食べた後、彼を家に招いた。今日は二月二十二日で彼と付き合い始めてちょうど二年になる記念日。彼の自宅に行ったこともあるけれど、デートの場所は大抵外だった。それが、まさか彼の方から家に行きたいって言ってくれるなんて。
ってことは、つまり、なんて妄想もするけれど…あたしの胸の内は、アパートが近づくにつれて、どんどん言い出し辛くなる。
そんなことは露知らず、部屋をぐるりと見渡した彼は感嘆した。
「うわぁ…!君って本当に猫が好きなんだねぇ!こんなに沢山、どこで見つけてくるんだ?僕が君と付き合えたのは、名前のお陰だったりして」
ふくよかな体躯にパツパツの洋服、タレ目で福耳――恵比寿様を彷彿とさせる彼の名前は猫田勝男。癒し系ではあるけれど決してイケメンではない。
「そんなわけないじゃない!偶然よ」
目を細めてニコニコしている彼に倣って笑い返したけれど、そんなわけあった。社員名簿で、たまたま見つけて一目惚れしたのだ。そう。名前に。あたしはそれから、偶然を装って彼に近づき猛アタックした。
会社で疲れて彼の横でうたた寝してしまった時に、その体型故か、はたまた基礎体温が高いのか、とても温かかったことが、より推しを連想させ、告白へと至ったのが二年前だ。できれば返事は二十二日に聞かせて下さい、と言葉を添えた結果、あたし達は付き合い始めた。
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