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「……ねぇ。この部屋、誰かいる?僕たち以外に」 そう聞こえた途端、私は震え上がったわ。なんて鋭い男なの!?一ミリも動かず、音も立てていないのに!それが分かる切れ者なら多少は偽装しなさいよ! 「いるわけないじゃない!」 彼女の叫び声がする。そうよね。恋人から異性の香水の匂いがしたら誰だって腹立つわよ。その上、口紅って。抜けているにも程があるわ。 「はっちゅん!……おかしいな。急にクシャミが」 「はぁ!?何よそれ。隠すなら中途半端にしないで徹底的に隠してよ!記念日なのに信じられない…もう知らない!帰って!」 とぼけた彼の言葉に彼女の声は震え、だんだん濡れていった。分かるわ。辛いわよね。すぐにドタドタドタッ!ガチャン!って音がして、それから部屋は静かになった。良かった。こちらの任務は完了みたい。 私、怪盗になれるかも!なんて呑気に思ってたら…今度は彼女が猫なで声を出し始めたの!私を呼んだわ。怖くなったから隙間から、こっそり見上げると猫じゃらしを振りながらゾンビみたいに、ゆっくり部屋を歩いてた。 「タマミ〜?いるんでしょ?出てきて?怒らないから」 えっ!?嘘!!バレてたの!?私は観念してベッドの下から這い出すと、ちらりと彼女を見た。 「もう!そんなところに隠れてたの?別にいてくれても良かったのに!あたし達の仲でしょ!」 彼女は笑ってくれたけど私は申し訳ない気持ちでいっぱい。二人の時間を邪魔したんだもの。 「猫の手も借りたいくらい忙しい時期だから、めちゃくちゃ早めに有休申請したのに散々だよ!もう、さっさとお風呂に入ってメイク取っちゃお!」
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