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私を見てそう言いながら浴室に消えていった。しばらくすると、ちゃぷん、ちゃぷんって水の声に紛れてデート中より少し低い彼女の地声が聞こえてくる。
「あっはっは!クシャミとか!マジで?あたしと一緒なの、よりによってそこ!?みたいな。はぁ……疲れた。今日はさすがにヒヤッとしたわー…見えるかもしれないところには付けないでって、いつも言ってるのに。あの馬鹿!」
浴室から出てきて鏡を見ながら髪を乾かし、モコモコの部屋着になって、フードを被るとシルエットは猫よ。耳が二つ増えて、ノーメイクで振り返った彼女の首筋にはキスマークがあるの。今日のものじゃないことくらいは私にも分かるわ。
「興味本位で性に合わないことやってみたけど…被るのは物理だけで充分。推しを被れるって最高だけど…あたしの場合、概念までやってたら精神持たん…すごいねぇ…やってる若い子は。このあたしがよく二年もやったと思わない?褒めてよタマミ……何その顔は。いいじゃん今回はお互い様だったんだから!推しと彼氏は別物…でしょ?」
彼女は、したり顔で笑う。そういう問題じゃないと思うんだけど。いくら猫が大好きだからって、それはやり過ぎなんじゃないの?同居してる身としては、ちょっとジェラシー感じちゃうじゃない。
「ほら!タマミ!そんなところで拗ねてないで!こっちで一緒にご飯食べよ?」
私は彼女が大好きだし笑顔に弱いの。悔しいけど、それを見透かされてる。敵わないわ。
そういえば…たまにいるじゃない?大好きだけどアレルギーっていう人。可哀想よね……ちなみに私は――
「タマミ〜!何してんの?ご飯だってば!早く〜〜!」
ああ!待ってくれてる…一緒にご飯食べたいから、そろそろ行くわ。ね?セールスじゃなかったでしょ?でも…貴女の興味を少しでも、ネコババできてたら嬉しいんだけど。なーんてね!ふふっ♪またお話しましょうね!
明後日の方を向いていたタマミは、尻尾を振りながらワン!と言って彼女の元へと駆け寄った。
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