プロローグ

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プロローグ

 東京でも、真冬は寒いんだなと思った。  特に、風が強くて、曇ってんだか晴れてんだか分からないような、こんな日は。  まあ、日の当たらない路地にいるんだから、曇りか晴れかは、どっちもでどうでもいいか。  俺は、手持無沙汰を紛らわすために、無意識にスマホをポケットから取り出した。  画面は、真っ暗だった。  大きな舌打ちのあと、深いため息をつく。  そうなんだ。一時間前に充電が切れて、まったく使い物にならなくなったんだよ。  充電が切れる前、最後に見たネットニュースによると、親父は死んだけど、お袋はまだ生きてるみたいだった。  心の底から願う。  クソババア。とっととくたばりやがれ。
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