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非人界 11
「朋佳さんは、幽霊よ」
亜紀子さんは、ふっと小さく笑った。
「訳アリというか、私とひょんなことから縁のある幽霊でね。私が非人界で働くことになったのも、最初は朋佳さんがきっかけなの。で・・・朋佳さんがあなたを見付けて、声をかけてここに連れてきた、と。ざっとこんなところね」
俺は、半目に、への字の口で、亜紀子さんを見上げた。
とてもじゃないが、信じられない。
「あー・・・悪いんすけど」
俺は、左手で髪をゴシゴシかきながら言った。
「俺、妖怪とか幽霊とか? そういうの、一切興味ないし、信じてないんで。ここで働くとか、普通に無理なんで、もう帰っていいすか?」
俺は、掛け布団の下の右手を、拳の形に固めた。利き手は右だ。ここから先、腕ずくで逃げる算段になった場合、攻撃は利き手のほうがいい。
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