始まり 2

1/1
前へ
/182ページ
次へ

始まり 2

 お袋は、恐怖のためか声も出ず、身動きも取れないでいた。知恵おくれみたいな表情で、血だまりを作っていく親父を見つめるのみ。  俺は、お袋の背後から近づき、さっとお袋の正面に回ると、心臓のあたりを狙って刺した。  でも、それが良くなかった。乳房が邪魔で、あまり深く刺さらなかったんだ。  包丁が刺さった時、お袋は、小さなうめき声みたいなものを発した。でも、それだけで、あとは気を失ったらしく、目をつぶって大人しくなった。  俺は、お袋の胸から包丁を抜き取ると、今度は腹に刺し直した。お袋は親父より腹の脂肪が厚い。そのせいか、手ごたえはいまいちだった。  けど、そこで俺は殺人行為をやめた。  両親を刺したら、すぐに逃げると決めていたからだ。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加