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始まり 5
俺は、路地の細い空を仰いだ。
白い。ただ白い。
ため息をつくと、その息も白い。
寒い。
腹減った。
「生きてると、ろくなことがねえなあ・・・」
目を閉じ、そうこぼした直後、
「あなた、生きてないじゃない」
という声が、耳元で聞こえた。聞き覚えの無い女の声だった。
俺は、びっくりして目を開けようとした。
でも、どういうわけか、金縛りにあったみたいに体が動かなかった。まぶたも、舌も、小指一本すら、動かすことができない。
混乱していると、同じ女の声が、こうささやいた。
「あなたは、体が死んでいないだけ。そんなの、生きてるって言わないから」
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