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驚いて嗣巳を見ると、益々口をへの字にして
「もう良いよ!新太のば~か!」
と吐き捨てるように言われて、唖然とした俺を残して嗣巳は教室へと入って行ってしまった。
「あ~らら、王子ご立腹?」
後から下駄箱に来た正人はそう言うと、俺の隣に並んで靴を履き替えている。
「王子ってさ、新太が大好きだよな」
「はあ?」
「はあ?って……」
正人は呆れた顔をして俺を見ると
「王子に同情するわ……」
溜息混じりに言うと
「新太さ、もう少し自分の魅力を自覚しようか」
そう言ってポンポンと肩を叩いた。
「そもそも、毎回王子に睨まれる俺の気持ちを分かって欲しいよ~」
冗談めかして呟く正人に、俺は肩を窄めた。
嗣巳とは、2年になってから絶対にクラスが一緒にはなれない分類分けをされてしまった。
俺は普通のクラスだが、嗣巳は特進クラスに進級したのだ。
一度決まると、相当点数を落とさない限りは普通クラスに落ちる事は無い。
嗣巳的には俺に特進クラスに来て欲しかったみたいだけど、俺は大学に進学するつもりが全く無かったからそれを拒否し続けた。
それ以来、嗣巳の態度がどんどんおかしくなっているのだ。
やたら我儘言うし、朝は寝込みを襲いに来るし……。
「はぁ……」
深い溜め息を吐きながら、俺は重い足取りで教室へと向かった。
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