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出会い
出会いは小学校1年生の春。
アイツはクラスに馴染めず、本ばかりを読んでいた。
頭が良くて大人しいアイツは、何故かクラスの奴等にいじめられていた。
「おい!止めろ!」
当時の俺はガキ大将だった。
親父から「本当にカッコイイのは、強きをくじき弱きを守る奴だ」と教育されていた俺は、当然のようにアイツを守った。
体育で2人組になると、必ず残されるアイツといつも組んで体育に参加した。
アイツはいつも、真っ赤な顔をして俯いてばかりいた。
悔しいんだろう
悲しいんだろう
身体が弱くて、少し体育が苦手だからって馬鹿にされていた。
負けず嫌いなアイツと、マラソン大会が近づくと2人でマラソン大会のコースを走って練習したりもした。
少しずつ、少しずつ、身体の成長と共にアイツも男らしくなっていった。
俺は相変わらずガキ大将で、頭が悪くてもスポーツが出来ればモテるのは小学生までと知ったのはいつの頃だろう。
いつしかアイツは、学級委員から生徒会長までする程に人気者になった。
いつも俺の後ろばかり追い掛けていた、アイツはもう居ない……
『PiPiPiPi』
目覚ましの音に手を伸ばし、アラームを消すとドアが荒々しく開いた。
「新太!起きろ!!」
出会った頃からは、随分と低くなった声のアイツ……成宮嗣巳が俺の上にダイブして来た。
「ぐふっ!」
息が止まり飛び起きる。
「嗣巳、テメェー!」
「起きない新太が悪い!」
睨み上げた俺の隣に寝転び、無邪気に笑う嗣巳に息を呑む。
(人の気も知らないで!!)
心の中で呟きベッドから起きる。
着替えようとパジャマを脱ぎかけて、ベッドに寝転んで俺をガン見している嗣巳が見えた。
「おい」
「ん?着替えるんでしょう?お気遣い無く、どーぞ」
なんて言ってやがる。
俺は嗣巳の首根っこを掴み、部屋から叩き出す。
部屋に鍵をかけると
「新太?なんで怒っているんだよ?」
何にも知らない嗣巳は、ガチャガチャとドアノブを弄る。
すると階下から
「つぐちゃん、ご飯の用意が出来たからいらっしゃい」
と、お袋の優しい声。
そして
「新太!つぐちゃんに迷惑ばっかり掛けているんじゃ無いわよ!さっさと起きてご飯食べなさい!」
の怒号が続く。
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