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「白王子と黒王子って、なんのことだ?」
思わず眉間に皺を寄せた瞬間
「あ〜らた!」
と叫ぶ声と同時に、背中に抱き付かれた。
胸をグリグリ押し付けるそいつを、正人に頼んで引き剥がしてもらう。
「莉緒!お前、いい加減にしろ!!」
怒って叫ぶ俺の腕に腕を回し
「嬉しい癖に!」
そう言って、腕に胸を押し付けるあざとさ。
制服のスカートを短くして、ブラウスは第二ボタンまで外して胸の谷間を見せるように制服のリボンを結ぶこいつは、同じクラスの一宮莉緒。
何故か、やたらと俺に絡んで来る。
俺は嗣巳一筋なので、ハッキリ言って女子に興味は全く無い!
しかも、こいつが俺に絡んで来ているのは、俺目当てでは無くて、嗣巳目当てだという事を俺は知っている。
過去にも何度かあった。
呼び出されて、俺への告白かと思いきや、嗣巳へのラブレターの橋渡し役だったり。
初めて出来た彼女が、実は嗣巳に近付く為に俺と付き合っていた事もあった。
嗣巳の人気は物凄くて、中学時代は女子の間で「成宮嗣巳はみんなのもの」協定があり、手を出せなかったらしい。
それで何故か、俺に矛先が向けられたって訳。
そんな経験をしていたら、さすがにもう騙されない。
俺を攻略したからって、嗣巳が自分を好きになるかなんて分からないのに……。
人間は、必死になると恥も外聞も関係無くなるんだと知った。
だからかな?
余計に女子に対して、恋愛感情を持てなくなってしまったんだ。
「ねぇ、新太!聞いてる?」
ぼんやり考え事をしていると、頬をふくらませて莉緒が俺の顔を覗き込んでいる。
「あ……悪い。ぼうっとしていた」
莉緒にそう答えていると
「一宮さん、制服はきちんと着ないとダメだよ」
いつの間にか、嗣巳が莉緒を俺から引き剥がしてふわりと微笑む。
そして俺の顔を見ると
「もちろん、新太もね!」
そう言って、莉緒が抱き着いていた腕を嗣巳が埃を払うかのように叩いた。
「制服の乱れは、心の乱れだよ」
と言いながら、俺の制服のシャツのボタンを上まで留めると、ネクタイまできっちり結んで微笑んだ。
あぁ……嗣巳の笑顔は、天使の笑顔だ。
思わず見惚れていると、嗣巳の腕を小野坂が掴み
「成宮君。そんなバカに触ったら、あなたもバカが感染りますよ」
銀縁メガネを押し上げながら呟いた。
その瞬間、嗣巳が小野坂の手を振り解き
「悪いけど、僕の親友を悪く言う人とは仲良く出来ないから!」
と、そう言ったのだ。
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