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スッキリしないままキヨさんのことを考え続けている。それはいつの間にか政宗に姿を変えて俺を混乱させた。
キヨさんは間違いなく女だった。
100人いたら全員が「綺麗な女の人」というくらいの美女だった。
そして政宗はどこからどうみても男っぽくてかっこよかった。
あまりにも対照的な2人なのに頭の中では同時に存在する。
(何が何だかわからん)
卒業から10年。
彼女が政宗だったとして、会わなかった間に何が起きたのか。知りたいけれど、それを教えろと言えるような距離にいなかった自分にも腹がたつ。
一方的に関係を切られて、次に女の姿で登場とか意味が分からない。
モンモンとしながら残業後の夜の街を歩いていたら、前方に揺れる黒髪を見つけた。追いかけて思わず声をかけてしまった。
「キヨさん!」
びっくりしたように振り返ったキヨさんが俺を認めて眉を落とした。一瞬ひきつる顔を誤魔化すようにキヨさんは頭を下げた。
「先日は大変失礼いたしました」
他人行儀なやり取りに俺は少しだけイラだつ。
もし政宗だったらなんでそんな態度を取るんだ。こっちは何も変わっていない。いや、少しは老けたけど、そこまでの変化じゃない。
お前が気づかないはずがない。
ソサクサといなくなりそうなキヨさんの腕を掴んで俺は言った。
「政宗だろ」
投げ出された直球にビクリとキヨさんが震えた。
「そうなんだろ、政宗。こっち向けよ」
キヨさんはひどく傷ついた顔で俺を見つめた。不安な顔つきで首を振る。
「違います」
「違わない。俺の目をだませるはずねーだろ」
3年間親友だと思っていたんだ。
隣でずっと見てきた俺の目を甘く見るな。
フルフルと首を振り続けたキヨさんは最後に泣きそうに顔を歪めた。
「清伊」
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