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1.入れ替わり 前夜
今日は、かなり飲みすぎた。頭が痛い。
送別会の主役は私なのに、送る側だけが盛り上がる宴会場と化した居酒屋の個室の片隅で、興醒め顔の私が何度もあおった酒。
これが原因だ。
目の前で展開する主役不在の世界から逃避したくて、ただひたすら呑んだのだが、頭がクラッとなって、耳がジーンとしてきて、一線を越えた――失敗したと思ったが遅かった。
しかし、その危機的状況であっても、辛うじて自制が効いたようだ。
次々と運ばれてくる料理は私から見て遠い位置に置かれ、彼らがワーッと箸を伸ばし、こちらにまで欠片すら回ってこないので、酒の力を借りて皮肉をかましてやろうと思ったのだが、何とか堪えられた。
みんなが腹一杯になった時に、私の前に空いた皿しかない事に気付いた誰かが「要らないの?」と言ったので、「ええ」と心にもない返事をした。「お料理よりも、お酒の方が単価が高いから、日本酒だけで良いです」なんて、嫌われ上司の口癖を女性の言葉に変えて補足したかったが、その追加発言はアルコールと一緒に飲み込んだ。
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