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私は玄関まで突進し、バッグがちゃんと閉まっていなかったことに小躍りし、爪を立てた前足を使ってスマホを引き出す。
そして、画面に表示されていた電話番号を見て、体が石像のように固まった。
――今日から新しく行く派遣先からの電話だ。
初日から遅刻。いや、この状況では、間違いなく欠勤だ。
長い呼び出しの次に、短い呼び出し。
一応、二回呼びだしてみたものの、無反応の私に先方が呆れている顔が目に浮かぶ。
私は、スマホの前で置物の猫のようになり、出られないと分かっていても次の着信を渇望するが、時は空しく過ぎていった。
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