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蛇口をキュッとひねれば、水が出るのに。棚をパッと開ければ、餌があるのに。
そのどちらも出来ない自分に、猫の無力さを痛切に感じる。
快適なマンションの一室は、体が入れ替わっただけで、二人にとって水にも食糧にも手を出せない密室と化した。
やるせない気持ちから無気力になった私。その気持ちが伝搬したのだろうか。ココミの「私」も床にゴロンと寝転がった。
何も与えてくれない――与えられない飼い主の寝姿をジッと見ていた私は、急に腹が立ってきた。それは、寝ている「私」に対してではなく、無気力の自分に対してである。
気力を振り絞って、冷蔵庫に再度挑戦する。
諦めずに何度でも。爪でドアが傷ついても構わない。きっとなんとかなると信じて。
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