4.入れ替わり 3日目

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4.入れ替わり 3日目

 翌朝、目が覚めると、ベッドの上にいたはずが、ソファの上にいることに気付いた。 「ニャー?」  私は、自分の声が猫の鳴き声なので、愕然とした。手を見ると、毛に覆われている。  やはり、寝て覚めたら、体が入れ替わるのだ。  推測は正しかったのだが、こんなの嬉しくない。  さて、自分の部屋で寝ている「私」を見に、部屋へ行こうと思って体を起こすと、異様な光景が目に飛び込んでギョッとした。  寝間着姿の私が、椅子の上でしゃがみ込み、テーブルの上にあった皿へ顔を近づけて、ビスケットをムシャムシャと食べていたのだ。  自分の食べ物を取られたという怒りを覚えた私は、テーブルの上へ一気に飛び乗る。  でも、「私」は一瞥しただけで、ビスケットの()(しやく)を続けていた。  私が前足を伸ばしてビスケットを一枚取っても、素知らぬ顔をしている。  もしかして、飼い主と飼い猫の入れ替わりを、ココミは気付いていて、食べ物を独占しようとしないのだろうか。  そんな気遣いをされていると思っただけで、ホロッとしてきた。  仲良くビスケットをシェアした後、腹一杯になったらしい「私」は、椅子から不器用に降りて、床にゴロンと横になった。  双方の空腹は、これで回避。  ――備えあれば憂い無しとは、よく言ったものだ。
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