5.入れ替わり 4日目

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 床の上で上半身を起こした私は、自分の両手と体と両足を見て、安堵の胸をなで下ろす。  ――間違いない。これは、寝ると体が入れ替わる呪いだ。  でも、誰が、何の目的で?  飼い猫の目線で人間の世界を見て、いろいろ体験して、飼い主が猫の気持ちを知るため?  ちゃんと世話をしないと、猫が()(わい)(そう)よ、と飼い主へ教えるため?  大丈夫。私は、ココミの気持ちを分かってあげているつもり。今まで、可哀相な事をした覚えがない。  ――なーんて、胸を張って言えないな。  大学を出て職にも就かず、このマンションでダラダラと生活して、ココミと遊ぶ毎日。  でも、母親に怒られて、1ヶ月前から派遣の仕事を始めた。  平日、ココミの相手をするのは夜。休日も寝てばかり。  寂しい思いをさせていたかも知れない。  ――それが原因なら、一体、誰が呪いをかけたのか?  腕組みをして考えていると、猫に戻ったココミがスーッと近づいてきた。  ふと、夢の中で聞いた母親の言葉を思い出す。 「ねえ、ココミ?」  私は、ココミを両手で抱き上げた。 「夢の中で、お母さんが『この猫が悪さをしている』って言っていたんだけど」  首を(かし)げるココミを真似して、私も首を(かたむ)ける。 「呪いをかけたのは、まさか、あなたとか?」 「――――」  無言のココミが、不気味に笑う。  異様なほどに口角を吊り上げて。
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