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窓辺まで這っていった「私」は、カーテンの隙間に顔を突っ込んで外を覗いている。その仕草はココミそのものだ。外に気を取られている隙に、私は、この入れ替わりの原因を探ることにし、椅子を経由して、床へ静かに着地した。
真っ先に思い付いたのは、「呪い」だ。
――誰かが、私とココミに呪いをかけた。
不思議な現象の説明は、何でもありのファンタジーなら付けやすい。魔法でも良いが、いたずらにしては悪質なので、呪いと決めつける。
――でも、どうやって呪いをかけた?
私とココミが最後に一緒にいたのは玄関だ。まずは、そこに呪術的アイテムがないか、探しに行く。思い当たる物が一つあるので、私は歩みを早める。
玄関へ行くと、目に付いたのは、散乱する自分の靴と、放り出したバッグ。
――花束がない。
タクシーに乗って、座って、右横に置いて。そこからの記憶が無いので、座席に忘れたか。
いや。実は、手にしていて家に入り、玄関で体に吸い込まれたか。呪いの発動のために。
私に冷たい先輩が珍しく花束を渡すから、それに呪いがかかっていたという妄想が、変な方向へ推理を導くので、私は頭を振った。普通に、タクシーに運ばれて、無賃乗車していったと考える方が良さそうだ。
これで、一気に「一寸先は闇状態」になった。思い当たる物が何一つ無いからだ。
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