#2 案内人 鈴木太一

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相良「お前は・・・」  パイプ椅子に座る男。  黒いスーツ姿に、目線を遮る黒いサングラス、逆立って無雑作な黒い短髪、整えられた顎髭、黒いネクタイ。  どれをとっても黒い、黒づくめの男。  だが、これだけはハッキリと解るしヒシヒシと伝わってくる。  強者の風格。  只者ではないという気配。ハッタリとか、見た目の問題ではない。 間違いない事実だ。 そして、この強者と対面した時。俺は自分が眠りについた経緯も思い出す。 東誠警備から脱出してすぐ、路地裏で戦った男、タクシー運転手を装い俺を付け回していた鈴木。 そんな奴に、俺は歯が立たなかった。 たった一撃のカウンターでやられてしまった。 戦った理由は、東誠警備の使いの人間である事。 それは即ち、 敵だ。 相良「テメェこの野郎!!」  俺は、あの時の怒りを思い出し、ソファーから飛び起きて男に殴りかかる。  顔面を狙ったパンチ。  寝起きとはいえ、俺はこの男に一撃を叩き込みたかった。  ムカついた。  路地裏でこの男はまるで知っているのかのように、こっちの気持ちを汲み取らずに言いたい事を言いやがった。  他人が解ったような口を聞きやがって。  それが許せなかった。 ガシ!! 相良「ツ!!」  鈴木は何も動じる事なく、俺が繰り出した拳を片手で受け止める。 鈴木「落ち着け。」  簡単に拳を振り解かれる。 鈴木「俺は、別にお前をどうこうしようとしちゃいねーんだ。ったく、寝て少しは頭が冷えたと思ったが、とんだ思い違いだったようだな。」 相良「ごちゃごちゃと言ってんなよ。叢雲さんと弥田さんはどうした?」  あの場には、叢雲さんと弥田さんもいた。二人は俺の両親に関する真実を知るために協力してくれた人だ。  俺が気絶してから、二人がどうなったかも心配だ。 鈴木「あの二人なら無事だ。」 相良「本当なんだろうな?信用できない。」 鈴木「信用できないだと?」 相良「そうだよ、当たり前だろ。 お前等東誠警備は、死霊跋扈とかいう半グレ集団を裏で操って俺を始末しようとした。 そして、実際に東誠警備の人間だってそうだ。そんなに俺の両親に関する真実を探られるのが嫌か? 俺の存在が邪魔なのか? 他人を巻き込んで、何処までも復讐とかくだらない事をしようとする連中の事を、簡単に信用できる訳ないだろ。」 鈴木「はぁ・・・伊邪無の兄さんのせいで、随分と勘違いをしているな。」 相良「勘違いだと?」 鈴木「あぁ。そもそもお前等は、東誠警備本社へと勝手に侵入したんだ。だとしたら、その侵入者であるお前等に対して襲ってくるのは筋が通る話じゃないのか?お前にも十分に非はある。 人の会社に忍び混んで自分は正しいというのか? お前がやった事は、不法侵入や強盗と一緒だろ。」 相良「・・・。」
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