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ぐうの音も出ない正論だ。
だからこそ腹が立つ。
鈴木「思い返してもみろ。お前が東誠警備本社に侵入する前、東誠警備は一度でもお前に手を出そうとしたか?」
相良「ある。お前等と死霊跋扈は裏で繋がってんだろ?山田を利用して俺を殺そうとした。それは表の会社には出来ない。」
死霊跋扈、その総長である山田仁。
山田は、俺が6年前に殺してしまった弟の仇を打つために俺を殺そうとしている。
それを東誠警備は利用した。
十分に手を出したと言い切っていい。
鈴木「半分正解で半分は間違いだ。」
相良「なんだと?」
鈴木「確かに東誠警備、正確にはその社長である大國真司と、山田仁には繋がりがある。表の会社には出来ない事を、死霊跋扈に依頼していた事も事実だ。」
相良「だったら・・・」
鈴木「だが、お前の事を殺せとは命令していない・・・大國も山田の事情は知っていた。お前に弟を殺された事もな。だが大國は山田に、
『絶対に手を出すな』と命令したんだ。」
相良「・・・どういう事だ?」
疑問、不信、その全てが頭を巡っている。
絶対に手を出すな?
大國は、山田に俺を殺そうと命令した訳じゃないのか?
いや、待てよ。
そもそも、俺はまだ鈴木という男を信用している訳じゃない。
嘘の可能性もあるから、どういう事だと聞き返した。
その問いかけに、鈴木は微かに口角が上がる。
何か面白い事でも言ったか?
鈴木「死霊跋扈がお前を襲ったのは山田の独断だ。山田は恩人であり、最も尊敬する大國からの命令も、相良に関しては一切飲めないと無視した。そこで、東誠警備はお前を山田から意地でも守り抜く為に警備についたんだ。滅多に警備業務につかない東誠警備では最強の幹部二人と、横浜で信用の置ける尾賀に、そして俺がだ。」
相良「・・・」
鈴木「まだ信用できないか?お前が山田から何を聞かされたかは知らねぇが、お前を守ろうとした人間より、お前を殺そうとした人間の話を信じるのか?」
相良「どっちも信用できるか。」
鈴木「・・・しょうがねぇ奴だな・・・お前は一緒に行動して世話になった尾賀も信用できないのか?」
相良「・・・それは。」
尾賀さん
少年院を出てすぐにエンゲージというバーで出会った。
それから横浜では喧嘩もしたり、一緒に戦ったり、この歌舞伎町に来るまでの費用を世話してもらったり。
悪い人ではない、それは感覚でも理解している。
鈴木「・・・」
何も答えない俺に、鈴木は呆れたようにため息を吐き、スーツの内ポケットに手を入れて、何か紙の様なものを取り出す。
鈴木「東誠警備は、はなからお前を警備する目的があったが、それとは別にお前の警備を依頼した人間もいる。」
相良「え?」
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