#2 案内人 鈴木太一

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鈴木「この書類は、警備請負契約書の原本だ。これには警備を依頼した人物と、契約内容に関する全てが記載されている。読め。」 相良「・・・」 鈴木から手渡された書類を受け取り、目を通す。 警備の内容を小難しい言葉でツラツラと記載がされている。 その一番下に、俺の警備を依頼した当人の署名と捺印がある。 その名前に、俺は驚きを隠せなかった。 相良「・・・北村・・・さん?」 警備請負契約書に署名した人物、即ち、東誠警備に俺の警備を依頼した人物は、 自殺をした俺の恋人である北村香奈の父であり、少年院の院長で、俺をまるで自分の子どもの様に鍛えてくれた恩人。 北村輝義さんの名前があった。 鈴木「これで、少しはこっちの話を聞く気になったか?」 相良「・・・」 鈴木「何も答えないという事は、こっちの事を信用したと捉えるがいいか?今更その書類が偽物とか、めんどくさい事を言うのも無しだ。 」 この字とこの印鑑、見覚えがある。 間違いなく、北村さんその人の物だ。 書類も捺印も本物だ。 だが、俺は北村さんが東誠警備に警備を依頼したという事は聞かされていない。 なぜ、警備を依頼したのか?なぜ、教えてくれなかったのか? また新しい疑問が生まれる。 相良「どうして、北村さんは俺の警備を依頼したんですか?それをどうして黙っていたんですか?知っていたら、こんな周り道もしなくて済んだのに・・・」 頭で思った事をそのまま鈴木に問いかける。 鈴木「お前が少年院を出て何事も無い可能性は低かった。現に山田の様な奴らや、横浜の三国同盟の様に、お前を狙う奴らは多かった。それからお前を守る為に警備を依頼したんだろう。そして、お前に黙っていた理由は簡単だ、お前が素直にそれを受け入れる事はないと思ったからだ。お前は、北村から警備を付けると言われて、それをよしとしたか?」 相良「それは・・・ないと思います。多分、迷惑をかけるから断ったと・・・」 鈴木「それがお前に何も話さなかった理由だ。余計な心配を掛けたくなかったんだろう。」 確かに、北村さんなら、俺に黙っていた方がいいと判断したと思う。 俺の事を理解し、心配をし、また助けてくれていた。 本当に、何処までも世話をかけてしまい、申し訳ないとしか思えない。 俺は、鈴木の話を聞いて、完全にとまでは言い切れないが、話を信用する事にした。 鈴木「因みに、お前と一緒にいた叢雲探偵事務所の二人にも、ここまでの話を尾賀から説明させた。お前が起きる前、尾賀から連絡があって、条件付きで理解し、俺に任せると返答があった。」 相良「叢雲さんも知ったんですね。あの人にも心配をかけてましたから。」 鈴木「さっきまでとは違って、随分と素直になったじゃねぇか。」 相良「えぇ・・・まぁ・・・ところで、その、叢雲さんが言った条件ってなんですか?」
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