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鈴木「ったく・・・しょうがねぇな・・・」
鈴木さんは呆れていて、尾賀さんも苦笑いを浮かべるばかりだ。
すると、鈴木というのは偽名でほぼ間違いなさそうだが、何故素性を隠す必要があるのかは、当然疑問に思う点だ。
ただ、人にはそれぞれ事情というものがある。
ここは、あまり深く聞かないほうだよさそうだ。
鈴木「相良、悪いが俺は訳あって偽名を使っている。俺は、表にそうそう出れる状態じゃないんだ。わかってくれたら助かる。」
相良「はい・・・まぁ、大丈夫ですよ。」
鈴木「あぁ。」
一瞬、鈴木は尾賀に殺気を送った気がした。
尾賀「そ、そうだ!!剣一腹減ってるだろ!!」
相良「はい。減ってます。」
尾賀「そう思ってよ。買ってきたぜ。」
尾賀さんは手に下げていたビニール袋から、容器に入った弁当の様な物を三つ取り出して机に並べた。
その容器からは食欲をそそるいい臭いが漂っている。
尾賀「牛丸屋の牛丼特盛だ!!遠慮せずに食え!!」
蓋を開けたら、牛肉が山盛に積まれている牛丼弁当だった。
やばい、めっちゃうまそうだ。
相良「ありがと・・・」
尾賀「いただきます!!」
尾賀さんは早々に割り箸を手に持ち、牛丼に食らいついていた。
鈴木「お前が先に食ってどうすんだよ。」
尾賀「俺ぁ牛丼には目がねぇんす!!」
鈴木「相良、お前も食える時にしっかり食っとけ。」
相良「は、はい。」
全員で牛丼を食す。
牛丼を食べるのは久しぶりだった。
少年院で似たような物はあったが、やはり外の飯とは格が違う。
甘味に旨味、どれを取ってもうますぎる。
そういえば、ここ歌舞伎町に来てからまともな食事を取っていない、というか食事すらしていない。
したといえば、叢雲さんと弥田さんの3人で山田のぼったくりバーで烏龍茶を飲んだぐらいだ。
気がつけば、俺は牛丼を米一粒残さず平らげていた。
尾賀が言うには特盛という事だったが、まだ食いたりない。
おかわりがしたい・・・
鈴木「そういえば、叢雲は大丈夫だったのか?」
尾賀「あぁ、まぁ最初はかなり疑われてたけど、なんとか信用してもらえた。」
鈴木「そうか。」
尾賀「けど、最後になんか妙な事聞いてたな。」
鈴木「妙な事?」
尾賀「あぁ、山田はどこにいるか?って聞いてた。」
鈴木「山田?山田仁の事か?」
尾賀「あぁ。死霊跋扈の総長だろ?俺ぁそいつが何処にいるかなんて知らねぇて言ったら、自分達で探すそうだ。」
鈴木「理由は?」
尾賀「さぁな。」
叢雲さんが山田を探している?
・・・そういえば、ぼったくりバーでは、気のせいかもしれないが何か知っているような感じだったな。
尾賀「まぁ見つけるのは、そんなに難しそうじゃねぇけどな。」
鈴木「どういう事だ?」
尾賀「叢雲探偵事務所からここに来るまで、まだ昼間なのに殺気だった若い奴が大勢でウロウロしてた。まるで誰かを探しているような雰囲気だったな。」
鈴木「なんだと?そいつらは・・・」
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