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横浜市内桜木町
某所 ビジネスホテル 客室
「・・・」
「・・・うーん・・・」
太陽が昇る直前、群青の空が薄く室内を照らす中、ぐちゃぐちゃのシーツに包まれた若い女性がベットの上で無防備に眠っている。
女性は茶色く染められたショートボブの頭髪に、少し丸みはあるが愛らしい小顔、その表情は幸せその者であり、気持ちよく睡眠している事がわかる。
睡眠とは、幸福である。
その幸福に水を刺すように、電子的な音が彼女の睡眠を妨害する。
「・・・」
聞こえているのかそうでないのか解らないが、彼女は完全に無視を決め込み、目を開く事はなかった。
だが、再び鳴り響く電子音が、彼女の邪魔をする。
「・・・もぉ・・・だれよ・・・って、外暗いし・・・・・・」
そう呟いて、彼女は電子音が鳴る手のひらサイズのスマホを操作し、再び眠りについた。
「もう一眠り・・・」
シーツで全身を覆う。
・・・
パァーーーー!!
「ぬお!!」
突然、室内に迫力のあるラッパの音がスマホから響く。その音を聞いた瞬間、彼女はシーツを投げて跳び起きる。
飛び起きた瞬間、彼女はダラダラと睡眠を謳歌していた時とは打って変わり、テキパキと行動する。
服を着替え、顔を洗い、歯を磨き、頭髪を整えて、鏡を見ながら化粧を始める。
「・・・ん?」
ここで、彼女はある事が気にかかった。
彼女は、昔の癖でラッパの音を聞けば嫌でも目覚める習慣がある為、朝の目覚ましには必ずラッパのメロディーを設定していた。
だが、その起床時間前には、確か、別の音がしていたような気がした。
思い出してみると、それはスマホの着信音であった。
「・・・やば・・・」
彼女は、恐る恐るスマホの画面を点灯させた。
「!!!!!!????」
驚きと恐怖で顔は青ざめ焦りの表情となる。
スマホの画面に表示される電話のマーク、そして、18と表示された数字。それは着信の回数を表している。
電話のマークをタップし、着信履歴を確認する。
そこには、上から下まで「鬼畜先輩」という名前が連なって表示されていた。
「やばい・・・」
彼女は、その名前の通り、鬼畜先輩には恐怖を抱いている。
そんな人物からの着信を合計18回も無視したのだ。折り返しの電話をした瞬間、憤怒する鬼畜先輩の姿が目に浮かぶ事は容易い。
どうしようかと考えに考えた彼女には、この危機を乗り越えられる程の言い訳も思い浮かばず、恐る恐る連絡をする。
「・・・」
プル
「深田ァアアア!!」
深田「ヒィイいいいい!!」
「何で電話に出ない!!」
深田「えっと・・・その・・・」
「今どこだ!!」
深田「ほほほほほテルでぇ・・・す。・・・」
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