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深田は、満員電車が嫌いだ。
息苦しい、窮屈である事は勿論、最も嫌いな理由、それは・・・
深田「・・・」
深田の胸に向けられた嫌な視線を感じる。
電車が揺れる度、視線を向ける者もわざとらしく体を大きく揺らし、深田の胸に接触しようとしてくる。
そう、深田が最も嫌いとするのは痴漢である。
自分でも何故この様に巨大化したかは解らないが、実際Fカップはある。
それが魅力的だと言う人間もいるだろうが、深田からすると邪魔で仕方がない、ちぎって配れるなら、悩める方々に分けて上げたいぐらいだ。
肩は凝るし、変な被害も合うし、過去には本気で邪魔だとも思った。
昔からこういう視線には慣れていたが、やはり嫌いなものは嫌いだ。
そんな状況が圧縮された空間、それが満員列車である。
深田「はぁ・・・」
溜息が自然と漏れる。
その後、片手にあるバックを胸に当て、視線と触れてこようとする人間を拒む。
目的の駅まで、後10分、もう少しの辛抱と自分に言い聞かせる。
深田「ん?」
深田の目に、電車の扉近くにいる一人の女子学生が目に入る。
サラサラとした若々しい黒髪に、茶色いブレザーを羽織った学生というのが分かる。
深田からは、その女子学生の後ろと横顔が微かに確認できる。
女子学生の様子に、深田は違和感を感じる。
頬は青ざめ、唇はガタガタと震えている。
また、電車の揺れとは異なり体が揺さぶられている。
恐怖している。
そう見えた。
深田が女子学生の背後を確認すると、鼻息が荒く、頬を赤く染めるハゲちらかった中年男性がいた。
深田「まさか・・・すいません、ちょっと通ります。」
深田は、人混みをかき分け、その女子学生に近づく。
女子学生も中年男性も深田には気づいていない、そして、腰あたりを確認する。
そこには、男性の片手が女子学生のスカートの中にズッポリと入っていた。
自分がされるならまだ我慢できる。
だが、他人が恐怖している状況は我慢できない。
ガシッ!!
「!!」
深田は男性の手を抑える。
驚きの表情を向ける男性
そして、涙ぐむ女子学生の瞳。
そして、深田はニッコリと笑う。
次の駅
深田「どおおおりゃああああ!!」
叫び声と共に、痴漢をしていた中年男性が電車の外へと投げ飛ばされる。
「イタタ・・・」
中年男性は腰を抑えて痛そうにしている。
その前に仁王立ちの深田
深田「あなた、自分が何をしたか、わかっていますか?」
「おい!!お前!!私は何もしていない、冤罪だ!!」
深田「はぁ?」
「それに投げ飛ばすなんて!!暴行だ!!」
痴漢を働いた男性は、まるで自分が被害者の様に喚き散らかす。
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