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深田「貴方が女子学生のスカートの中に手を入れているのを目撃しました。だから投げ飛ばしたんです。」
「私は痴漢だと!!そんな事する訳ないだろ!!君!!わ、私が誰か知っているのか!!」
中年男性は必死に自分が無実である事と、悪いのは深田と決めつけてくる。だが、そんな状況でも深田は少しも動じない。
深田「はい。よく存じ上げています。横浜市市長の秘書の方ですよね。」
「そ、そうだ!!そんな私が痴漢なんかする訳ないだろ!!君、社会人か?いますぐ会社に抗議の連絡をするから名刺を出しなさない。」
深田「えぇ、いいですよ。」
深田はポケットから一枚の名刺を中年男性に差し出す。
「・・・はっ?」
その名刺を見た途端、男の顔は青ざめて、油っぽい汗が流れ始める。さらに、深田は自らのスマホを取り出し、中年男性に見せつける。
スマホの画面には、中年男性が痴漢をしている様子が一部始終撮影されていた。
深田「私、新聞記者です。」
男には、この言葉だけで十分だった。
揺るぎない確かな証拠、そしてその情報を握るのが新聞記者。
それは、自らの行いを公に晒す事ができる人間が目の前にいる。
深田「さぁ、どうしますか?」
「ぐっ・・・!!くそぉおおおお!!」
中年男性は怒りで暴れ始め、深田のスマホを奪おうと突進してくる。
深田「ふん!!」
だが、深田は中年男性を容易く押し倒し、身体を拘束する。
柔術に近い動きだった。
深田「言い忘れました。私、こう見えて元自衛隊なんです。ニヒっ」
軽く笑って見せる深田。
「く!!くそ!!」
早朝のホームが一時騒然となる。これで完全決着。もうこの男に未来はない。今まで積み上げてきたキャリアも全て消え失せるだろう。
深田「・・・」
少し考える深田。
周囲には、痴漢の被害者である女子学生の姿はない。電車の中に残っているようだ。
深田「もうこんな事しないと約束できるなら、逃してあげましょうか?」
「な、なんだと?」
深田「時間がありません、どうしますか?」
「わ・・・わかった。もうしない。」
深田「わかりました。」
深田は男を解放する。中年男性はスタコラさっさと逃げていった。
「どうしました!!」
鉄道警察が到着し、状況について確認する。
深田「ただの口喧嘩です。今和解しました。」
「そ、そうですか。」
深田が、男を逃した理由は二つあった。
一つは、立場のある人間の弱みを握った事、それは新聞記者としてはかなりの収穫で、今後の揺さぶりに使える事。
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