#6 埋め合わせが出来ない孤独

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ふと、薄暗く人気が少ない路地裏に入った時、電柱の下で誰かを待っている様子の女性が目に入る。 その女性は、黒い服装で、ミニスカートから太ももを露わにし、胸の形がハッキリと分かるシャツを着て、露出も多かった。 こんな夜中に女性一人で薄暗い夜道にいるのは不用心だなと少し心配になったが、俺には関係がない事で、前を通り過ぎようとした時。 「オニイサン オニイサン」 片言の日本語で突然声をかけられ振り返った。 よく見たら、アジア系の外国人女性でハッキリと言い切れないが、多分韓国人。 慣れない場所で、道に迷ったのか? 相良「どうしました?」 「イマカラドウ?」 今からどう? どういう意味だ? 「アソビ、イチゴ」 擦れる様な小さい声で、意味の解らない事を言っている。 困惑している俺に、韓国人ぽい女性はタタミかける様に小声で話を続けた。 「オニイサン、ジカンアル?イチゴデサイゴマデ。ドウ?」 ・・・ えっと・・・まじで意味が分からん。 イチゴ?果物だよな? サイゴマデ? アソビ? ・・・ お腹いっぱいになるまで、イチゴが食えるという意味だろうか? だが、こんな夜中にイチゴ狩りの呼び込みとは、この人も大変なんだなと、不思議に思うと同時に不憫に思えた。 相良「イチゴは、別に今入りません。そんなに腹減ってないし・・・」 「??」 女性が困惑している。 俺、変な事言ってないよな? 聞かれた質問に答えただけだ。 「!!」 何かを思いついた女性は、突然耳もとに口を寄せてきた。 突然の急接近で身を返す。 相良「ちょっと・・・何ですか?」 「・・・一万五千円で、私とホテル、エッ・・・する?」 相良「!?」 そうか、何となく、微かに、誰かから、どことなく聞いてた様な事が、多分あったと何となく思い出した。 夜が深くなる時間帯に、路地裏で呼び込みをする外国人女性がいる事を。 目的は、ハッキリ言うと売春。 そんな話を、少年院にいる誰かから耳にしていた。 この場合、気をつけるべき事も聞いていて、怖いのは感染症と美人局と警察。 だから、関わらない事が一番だが、少年院の中で楽しそうに話すそいつの記憶では、そういうアウトローな雰囲気がいいと言っていた、 気がする。 別に興味があって聞いていたわけではない。 自然と耳に入ってきた事を、微量に覚えてただけだ。 さて、そういう事なら、断るに越した事は無い。 相良「すいません。」 「オニイサン、サービススルヨ。」 女性は自らの武器である胸を突き出し、積極的に手まで握ってきた。 相良「・・・」 ダメだ・・・断らないと・・・どうすれば振り切れる。 『この女無理ってなったら、何聞かれても無視だ。』 少年院の名前も知らない奴が言っていた事を思い出し、無視を決め込む事にした。 相良「・・・」 女性を振り切り、また一人歩き出した。 何を聞かれても無視をした。 すると、女性は諦めたのか、元いた電柱のある場所に戻って行く。 ・・・ 相良「・・・」 また、一人になった。 すると、あの感覚が戻ってくる。 孤独と不安、それを飲み込んだ黒蛇。 孤独・・・不安・・・
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