#6 埋め合わせが出来ない孤独

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相良「・・・」 一瞬、深田さんが頭をよぎる。 相良「・・・」 そして、さっきの人に手を握られた時に感じた温もり 相良「・・・」 女の体・・・ 相良「・・・」 一人の時に繰り返される孤独と不安。 ・・・ 相良「・・・」 俺は、無言で、二枚の万札を女性に突き出していた・・・。 「オニイサン。イコ。」 ・・・ ホテルに入った時 俺は、抑え込んでいた欲望、そして、失った物を埋めようと獣の様に女を貪った。 興奮し何度も喰らいつき、体を絡まらせ、肌の体温を感じ、快楽を味わう。 その様は、自分自身が頭を締め付けていた黒蛇の様だった。 熱い吐息が漏れ、汗ばみ、飢えを満たす様に貪り喰らう。 白濁の液体が溢れても、何度も・・・ 何度も・・・ その時折、一瞬、深田さんの姿がよぎる。 目の前の初めて会う韓国人の女性の姿が・・・ 重なってしまう。 それでも、俺は求め続けた。 俺が、あの時求めていた物。 深田さんと話している時に、最後に言おうとしていた事。 それは・・・温もりだった。 他人の温もりを感じる時、孤独が薄れる様な気がしていた。 相良「はぁ・・・はぁ・・・」 「オニイサン・・・ゲンキネ・・・」 相良「・・・」 「サビシイノカ?」 相良「!!」 「マダスル?ゴムナイ、アトイチマンデ、ナマ、ナカOK。」 相良「・・・もういい。」 「・・・ソウ。」 裸の女性は、シャワーを浴び、手早く服を着た。 「オニイサン、アリガトウ・・・」 それだけ言い残し、女性は部屋を出ていった。 相良「・・・」 自分でも抑えきれない程の欲望だった。 最後に誘われた行為を、俺はしていたかもしれない。 ただ・・・ 「サビシイノカ?」 その一言で香奈の姿が頭をよぎった。寂しさは香奈が感じていた事で、香奈は孤独になり、自ら命を絶った。 そして、俺の心を罪悪感が溢れ、我に帰った。 ホテルの中、何の音も聞こえない孤独な空間。 相良「・・・くそ。」 求めていた事が満たされて、少しは気が紛れると思ったが・・・ 今、この時が一番辛い・・・ これが、香奈が感じていた感覚と・・・俺は、初めて心で理解した。 相良「何・・・やってんだよ・・・俺は・・・」 裸体のまま、ベットでうずくまる。 さっきまで抱いていた女性の残り香が、 臭くてたまらない・・・ ーーー 歌舞伎町、天下一通り・・・ 叢雲「どおりゃ!!」 弥田「デェい!!」 大通りのど真ん中で、大勢の赤い服を着た集団に取り囲まれる叢雲探偵事務所の叢雲と弥田。 弥田「なぁこれで何人目だ?」 叢雲「めんどくさいから数えてない。」
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