#6 埋め合わせが出来ない孤独

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鈴木「・・・わかった。」 その一言だけを呟き、鈴木は着信を切る。 鈴木「・・・」 PRRRR 立て続けに着信が鳴り、鈴木は電話を取る。 薙島「おう。今は鈴木って名乗っとるんやったな。」 鈴木「あぁ・・・どうした?」 薙島「お前も、歌舞伎町での騒動は聞いたか?」 鈴木「今知った所だ。そっちの状況はどうなんだ?」 薙島「東誠警備は、契約を結んどる店舗の防衛で手一杯やが、兄弟が妙案で出張っとる。」 鈴木「妙案?」 薙島「正体隠せば、堅気でも喧嘩できるんちゃうかって、変な仮面被ってやっとるらしいわ。」 鈴木「兄さんらしいな。それでも、手は足りるのか?」 薙島「何んとかってとこやな。」 鈴木「・・・」 薙島「いても立ってもいられへん。そんな感じやな。」 鈴木「あぁ・・・だが・・・」 鈴木が黙り、助けに行く事を躊躇っているには理由があった。 鈴木は今は正体を隠している。表舞台に出る訳にはいかず、故に、歌舞伎町を助けに行く事が現状難しい。 薙島「安心せい、俺等にしか出来ん仕事がある。」 鈴木「何?」 薙島「歌舞伎町、アジア街、そこまで来れるな?」 鈴木「・・・あぁ。」 薙島「ほな、頼んだで。」 鈴木「・・・」 鈴木は、愛機であるタクシーのエンジンに火をつけ、ギアを操作し、タクシーを発進させる。 お台場から高速道路に入り、真っ直ぐに歌舞伎町を目指す。 歌舞伎町に差し掛かった時、まるで祭りの喧騒の様に騒がしく、いたるところで暴動が発生していた。 その暴漢達を突破し、薙島に指定された歌舞伎町の東側に位置する旧アジア街へと車を突っ込む。 ここは、かつてアジア系マフィアが牛耳る島で、まだ指定暴力団だった東誠会と激しい抗争の最中に火事でほぼ消失。 現在ではアジア街という名前の通り、アジアンテイストな店舗が並ぶ東京の中華街となっている。 そこにはアジア系マフィアはもう関係ない場所となっていて、現在では平和な繁華街だ。 そう、平和なのは、この喧騒で埋めつかされた歌舞伎町の状態でも、ここだけは静かだった。 タクシーを降りる鈴木は、すぐにその違和感に気づいた。 薙島「来たな。」 建物の影で鈴木の到着を待っていたスーツ姿の薙島。 鈴木「これは、いったいどういう事だ?」 薙島「この中国人の暴動。その拠点になっとるんがここらしいわ。俺とお前で潰すで。」 鈴木「それをどうやって知った?」 薙島「匿名・・・からの知らせや。行くで。」 薙島と鈴木は、このアジア街で一番巨大で豪華な建造物に突撃。 鍵のかかった朱色で彩られた扉を破壊し、中に入ると、そこには大勢の中国人が待ち構えていた。 その中でたった二人で戦う。 相手は銃と刀で武装しているにも関わらず、鈴木と薙島は非武装でもっているのはただの拳のみ。 飛び交う銃弾、迫り来る研ぎ澄まされた刃。 無数とも言えるだけの集団。 だが・・・ この二人には、簡単な事であった。 数分後には、この場所で無傷で立っているのは、この二人だけとなる。 まさに無敵 まさに無双 この二人の強さは測り知れない。 謎の中国人集団を全滅させた二人は、まだ気を失っていない一人の中国人を発見し胸ぐらを掴み、尋問を始めた。
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